浜松市からイノベーションを起こす!Hamamatsu Incubator 2022 Special Interview受賞者インタビュー Hamamatsu Incubator2022
Special Interview

浜松市は、グローバルに活躍する起業家「Next Innovator」を育成すべく、「Hamamatsu Incubator 2022」を実施した。
起業を志す人材や企業内起業家、創業間もないスタートアップを全国から募集し、成長が見込まれるビジネスプランを選出。
経験豊富なメンターと共に、半年かけてビジネスプランをブラッシュアップし、2023年2月8日に開催されたデモデイ(最終成果発表会)で最優秀賞1名と優秀賞1名が表彰された。
2名はどのようなビジネスプランでどのような課題を解決していくのか。お話を伺った。

Speaker

メンタル起因の休職、再休職率をゼロに

株式会社MentalBase 林真之氏
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どんな課題を解決する事業を作ったのでしょうか?
aどの企業にも、メンタル起因で休職している人やその予備軍がかなりの人数います。しかも、メンタル不調の人が一人いると周りの人も引きずられる“不の連鎖”が起こりやすいことや、一度休職した人が復帰後に再休職に至る割合は32.4%と高いこともわかっています。

しかし、世の中には標準化された正しい対応法がないため、企業の人事担当者は試行錯誤しながら独自の対策を打つほかありませんでした。この状態では再休職率低下がうまく進まない場合があり、人事の限られたリソースをメンタルケアに取られてしまう上に、人事担当者自身も引きずられてしまう可能性があります。負の連鎖がおこってしまいます。おぼれている人を助けようとした人も、専門の訓練をしていないとその助けようとした人も道連れになってしまいます。「餅は餅屋」で専門家に託し、人事や産業保健職が本来する仕事に人的資源を振り向けることができます。これにより企業の人的投資の効果が上がります。

そこで、人事の手を煩わせることなく再休職率を限りなくゼロに近づける、SaaS型の「企業向け復職支援サービス」を開発しました。
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プログラムで得られた気づきや、参加して良かったことを教えてください。
aチーム編成の仕方や、誰からお金を調達すべきなのか、顧客とはどんな姿勢で接するのかなど、いろんなリスクを潰しながら成功確度を高めるためのアドバイスをいただけたのは、私にとって大きな価値でした。

また、プログラム参加前は課題を解決することだけを考えていましたが、プログラムに参加したことで視座が高まり、経営における優先順位の付け方や判断の仕方、事業価値の表現方法なども身につきました。
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最優秀賞を受賞して、何か変化はありましたか?
a今回が初めての公のピッチだったのですが、デモデイ後に内容を詳しく聞きたいと企業の人事から多くのアプローチを受けました。目に見えなかった課題を可視化できることをシンプルに伝えられるようになったのは、メンターの皆さんのおかげです。
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今後の展開を教えてください。
a2023年3月からスタートした大企業との実証実験結果を2023年中にリリースし、2024年末までにシリーズAの調達、その先に上場を目指しています。まずはエンタープライズ向けにサービスを展開して、その簡易版を作って中小企業にも広め、ゆくゆくは企業規模に関係なく全ての企業のスタンダードにしたいと考えています。企業ごとにメンタルヘルス対策を企画立案していかなければならない時代から、日本全体でメンタルヘルス対策を考えることができる時代になります。必要な時に、その場面に適した対策を企業はこのシステムを導入することで得ることができます。
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実証実験に関しても、メンターからのアドバイスはありましたか?
aもともと中小企業での実証実験を試みていたのですが、なかなかうまくいかなかったんですね。その理由をメンターに分析してもらった結果、サービスのペルソナが間違っていることがわかりました。

つまり、このサービスを圧倒的に求めているのは中小企業ではなく大企業だったということ。実際、大企業にお声がけするとアポイントから実証実験に進む確率は8割にまで好転しました。

現在、実証実験をスタートさせて1ヶ月程度ですが、2023年中に誰もが納得できる数字結果をきちんと出して、このサービスを社会のスタンダードにしていきます。企業のご担当者様には、メンタルヘルス対策がコストではなく投資であることを是非体感していただきたいです。

クレープ生地焼きロボットで世界一に。
省人化とエンタメを実現

株式会社モリロボ 森啓史氏
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どんな課題を解決する事業を作ったのでしょうか?
a私は、ホテルや外食産業の人手不足に起因する課題を解決するロボットを開発しました。きっかけは、人手不足の飲食チェーン店が、夜間をワンオペで営業していたことです。深夜に一人で営業するのはリスクが高いですし、効率も悪いですよね。

私は自動車工場で生産性を上げるロボットを開発していたので、この技術を横展開できないかと考え、試しにクレープの生地を焼くロボットを開発しました。これを披露するとかなり良い反応を得られたのですが、私には経営や事業をスケールさせるノウハウがなかったので、このプログラムに参加させていただきました。
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プログラムで得られた気づきや、参加して良かったことを教えてください。
aこれまで直感的にロボットを開発していたのですが、事業化するにはそれを言語化や数値化する必要があることを知り、正直途中で投げ出したくなることもありました(笑)。それでも諦めずにメンターに伴走いただいて、事業化につなげられたのは本当に良かったです。
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優秀賞を受賞して、何か変化はありましたか?
aデモデイは浜松市の会場に行けず、東京の展示会場からZoomで参加したのですが、私の発表を聞いて想像以上に多くの人が集まり、誰もが知るような有名ホテルとの商談がその場で決まったんです。さらに後日、アメリカの飲食店からも問い合わせをいただき、デモデイから1ヶ月も経たずに海外デビューを果たすことになりました。
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今後の展開を教えてください。
aデモデイ時に商談したホテルで、2023年5月に小型のクレープ生地焼きロボットをデビューさせることが決まりました。ビュッフェ形式の朝食会場に置き、宿泊客に非接触で美味しいクレープを楽しんでもらいます。人手不要でエンタメ要素も高いので、これをうまく話題にして全国のホテルやファミリーレストランなどの外食産業に一気に広めたいと考えています。

そうして目指すのは、2025年の大阪万博で世界中の人にロボットの存在を知ってもらうこと。世界中どこのホテルに行っても朝食会場にはクレープ生地焼きロボットがある状況を作れたら、他のロボットも開発したいと考えています。